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February 10, 2016

Step4 データ収集:非侵襲的下肢血流評価法について

EQuIPという下肢血流評価法のプログラムをご存知ですか?
虚血肢国際コンセンサス会議、TASCIIのチーフエディターであるWilliam Hiatt博士(コロラド大学心臓血管内科教授)が科学的根拠に基づいた測定方法で下肢血流評価の手順書を作成し、測定トレーニングを実施、履修証を発行してくれます。

すでに日本に導入されているEQuIP検査は;ABI、TBI、運動前後のAP測定、トレッドミル(Gardner法)、経皮酸素分圧法 (TcPO2)、近赤外線分光法 (NIRS)、潰瘍測定です。

これらの下肢虚血検査の課題は施設ごと、測定者ごとの検査値のバラツキが大きいことでした。特にトレッドミルはメタアナリシスで30%のプラセボ効果があるとされていますし、潰瘍測定なんかメジャーで直径・短径を測定しているだけだったりしますよね。

EQuIPでは正確な測定データを取得するために、測定トレーニングを実施し、履修証を取得した人だけが細かな手順書に沿って測定することを容認しています。機器の業者さんを呼んでハンズオンセミナーを実施するのとは違い、その機器を使用して医療従事者が「どのように測定を実施するか」をトレーニングするものです。患者さんの検査前準備、体位、測定順序、検査値の取り扱いなど、意外に測定値に影響してくるのです。

日本ではすでに医師12名、看護師5名、検査技師11名がEQuIP履修証を取得しています。今後、世界基準で同一の測定方法を実施することで、国際共同研究にも役立つことでしょう。そして、何より下肢虚血の患者さんがきちんと血流評価されることが大事です。先週もHiatt博士の研究チームのトレーナーを海外招聘し、EQuIPトレーニングを実施しました。日本では5年前から年に1回ペースでこのトレーニングを実施しています。Hiatt博士自らも日本に来日しトレーニングに参加してくれる時もあり、今年の10月はHiatt博士もトレーニング参加予定になっています。

December 06, 2015

Step3 倫理的側面での準備

看護研究を行う際には、倫理側面を考慮する必要があります。

倫理の原則であるヘルシンキ宣言や、日本では臨床研究倫理指針に則って研究を実施します。

研究計画の段階で、施設の倫理審査委員会へ研究の倫理審査を実施していただき承認を得るという重要な段階を踏みます。倫理審査の承認を得ずに行った研究は最近の看護雑誌の論文には投稿できないことが多くなっています。

 

観察研究か介入研究かで大きく内容は変ってきますが、倫理審査の承認を得る際に特に重要な倫理的ポイントは「同意説明・同意取得方法」や「データの取扱い」です。他にも社会的・科学的価値や科学的妥当性、適正な被験者選択法、リスクベネフィットのバランスなども審査されます。

 

後ろ向き研究の場合は患者さんの同意をとることが難しく、同意説明や同意取得方法は割愛されますが、通常はそれでも施設のホームページ等で研究を広く公表し、患者さんご自身から自分のデータを使わないで欲しいとの連絡が入った場合を想定した研究計画にしなければいけません。前向き研究ですと、同意説明文書・同意取得書を作成し、その文書も倫理審査で承認を得る必要があります。

 

説明と同意に基づいていない前向き研究は倫理に抵触するだけでなく、研究の信頼性にも欠ける結果となり、学会発表や論文発表でデータを広く国民に還元することはできません。倫理的側面での準備を怠ると、結局誰にとっても利益のないものになってしまいます。

 

昨今社会を騒がせた研究にまつわる出来事の影響もあり、研究者の行動は、自律的にも組織的にも厳しい管理が要求されています。ややこしい話ではありますが、お作法を守ることで、患者の権利、研究の客観性を保証することにつながり、研究そのものの価値も高まると思えば、やはり重要なステップとなります。(田中)

December 05, 2015

Step2 効果の指標 エンドポイント

血管看護領域では、世界的に見て科学的研究手法による研究は圧倒的に少ないです。がん看護、創傷ケア、循環器領域に比較して少ないという言い方もできます。

 

医師が医療行為を評価する時はガイドラインに沿っていて、とてもシンプルです。例えばCLI (重症虚血肢)の評価は心血管イベント発生率・死亡率・全死亡率・救肢率・疼痛・潰瘍・QOL・血行動態の改善などで、IC (間歇性跛行)の評価は歩行機能の改善、総合的なQOLの改善などが主にあげられます。

 

では、看護では何を評価ポイントにすれば良いのでしょうか?

良く使われるのはQOLですが、ここで注意して欲しいことは、看護研究で良く行われている間違った解釈についてです。「患者さんのQOLが良くなった=自分たちの看護がQOL向上に貢献し病棟の質的向上にもつながった!」と安易に結論づけることです。この結論は他の要因(診断名・治療の種類・リハビリ・生活環境・患者さん個人的要因・病期分類)の影響を除外できていないことが多いです。また、もっと分かりやすい例だと「手術件数の増加=自分たちの看護で医師が効率的な診療が可能になり症例が増加した。」なんて結論はどうでしょうか?これは、社会的要因・環境要因・もともとの疾患増加率・患者照会システムなどなどを全く考慮していない考察だったりします。因果関係について論理的に記述することも必要になりますね。

 

看護師が患者成果に貢献していることを示せるもの、看護の効果の指標は具体的にどのようなものがあるでしょうか。

 

創傷ケアであれば、潰瘍治癒率や感染防御率、循環器看護だと生活指導による再狭窄率、間歇性跛行の患者さんには運動リハビリによる跛行出現距離・最大歩行距離の変化率、PAD外来看護師だと喫煙指導による禁煙率の増加と再狭窄率もしくは病態病期悪化率の関係などなど…それぞれの疾患の特性と看護の目的に見合った正しい評価項目で予め設定する必要があります。

 

行った看護ケアの効果をしっかり測れるもの、そもそも患者の目標や希望が何かということに立ち戻ることにもなります。(田中)

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